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いんべすた@
投資家・FIRE民
21年のサラリーマン生活とFXでの全財産喪失を乗り越え、45歳でFIRE達成。見栄の消耗戦を降り、戦略的に自由を勝ち取る方法を発信中。東海エリアで平日昼間に遊べる仲間を探しています!

努力するな配役を変えろ。「できない自分」を脱出する分人スキル獲得術

※約13,895文字、読了時間24分

「本を読めるようにならなきゃいけないのに、全然頭に入らない」
「今年こそは年間100冊読むぞ!と気合を入れたのに、数冊で息切れして挫折した」
「スキルアップのために勉強を始めたけれど、義務感ばかりが募って苦痛でしかない」

もしあなたが今、そんな息苦しさを抱えているなら、まず最初にお伝えしたいことがあります。
あなたが本を読めないのも、勉強が続かないのも、あなたの意志が弱いからでも、能力が足りないからでもありません。

原因は極めてシンプルです。「スタート地点が義務感(欠乏感)」であり、いつの間にか「手段が目的にすり替わっている」からです。

世の中の真面目な努力家ほど、「自分にはこれが足りない」「人並みにできるようにならなければならない」と、自分で勝手に決めた参照点に縛られて自滅していきます。読書も勉強も、本来は知的好奇心を刺激したり、目の前の課題を解決して人生を面白くしたりするための「道具」だったはずです。それなのに、いつの間にか「最初から最後まで通読すること」や「100冊というノルマを達成すること」自体が目的になり、ひたすら苦痛に耐えるお勤めと化してしまう。

そんな状態の脳が、知識を楽しく吸収できるはずがありません。小学生の頃、意味も分からずひたすら漢字や年号を暗記させられる授業に強い苦痛を感じ、「こんなこと覚えて何の意味があるんだ?」と嫌気がさした経験は誰にでもあるはずです。目的と好奇心が抜け落ちたインプットは、脳にとって苦行以外の何物でもないのです。

では、どうすればこの不毛な消耗戦から抜け出せるのでしょうか?
答えは、努力の量を増やすことではありません。「先にその状態になりきる(アイデンティティを先行インストールする)」ことです。

役者さんが役に入り込むと人格や普段の所作まで一変してしまうように、人間は「自分はこういう人間だ」という自己認識(ラベル)に合わせて行動を選択します。自信がついてから行動するのではなく、先に「配役」を変えてしまうのです。

この記事では、芥川賞作家・平野啓一郎氏が提唱する「分人主義」という強力なフレームワークを補助線にしながら、かつて現場職から完全未経験でIT部署へ異動になり、この「なりきり手法」によって周囲から頼りにされる存在へと変わっていった私自身のリアルな生存戦略を交えて、努力感をゼロにして本物の成果とワクワク感を獲得するアプローチを徹底的に言語化していきます。

1. 真面目な人ほどハマる「義務感の努力」と「自滅のメカニズム」

そもそも好奇心がないから頭に入らない

「本が読めないから、読めるようにならなければならない」
この思考の出発点を冷静に観察してみてください。ここには「ワクワクする好奇心」や「これをどうしても解決したいという切実な問い」が1ミリも存在していません。あるのは、「読めない自分はダメだ」という欠乏感と焦燥感だけです。

欠乏感を発進のエネルギーにすると、脳はずっとブレーキを踏みながらアクセルをベタ踏みしているような状態になります。

  • 「読まなければならない」
  • 「頭に入れなければならない」
  • 「途中で投げ出してはならない」

こうした無数の「〜ねばならない(Must)」に脳が支配されると、読書や学習は純粋なストレス源へと早変わりします。どれだけページをめくっても文字が上滑りし、数ページ進むと眠気に襲われるのは当然です。脳が「これは自分にとって生命維持に関係のない苦痛な作業だ」と正しく判断してシャットダウンしようとしているからです。

もしもスタートが純粋な好奇心や課題解決であれば、そもそも「本全体を最初から最後まで律儀に読む」という発想すら生まれません。

例えば、自宅のネット回線が突然繋がらなくなって困っている時、ルーターの分厚い取扱説明書を1ページ目の「安全上のご注意」から順番に全ページ読む人はいませんよね? 目次を開き、「インターネットに繋がらないとき」の該当ページだけをピンポイントで開き、そこに書かれているリセット手順を試すはずです。

読書もまったく同じです。解決したい問いがあれば、本全体を読む必要など毛頭なく、「自分の知りたい答えが書かれている数行」を拾い読みするだけでミッションは完了します。最初から最後まで頭に入らないのは、記憶力が悪いからではなく、あなたの脳が「今の自分にとって不要な情報」を正常にスクリーニングして捨てている証拠に過ぎません。

「手段の目的化(KPIの形骸化)」が生む悲劇

真面目な努力家が次に陥る罠が、「手段の目的化」です。
分かりやすい例が、「年間100冊読書マラソン」や「毎日1時間資格勉強」といった目標設定です。

誤解のないように言っておきますが、それが楽しくて心からワクワクしてやっている人を否定するつもりは毛頭ありません。問題なのは、「100冊読むこと」「机の前に1時間座ること」自体が目的にすり替わってしまっているケースです。

数字を追うこと自体が目的化すると、人は「とにかく冊数を稼げる薄い本」を選び始めたり、内容を理解していないのに「とりあえず最後のページまで目を走らせたから1冊読了」とカウントしたりするようになります。ビジネスの世界でよくある「形骸化したKPI」とまったく同じ現象です。

その結果どうなるか。
「自分はこんなに努力している」というサンクコスト(費やした時間と労力)の実感だけは異常に肥大化します。しかし、本を閉じた後に心に残っているワクワク感はゼロ。現実の生活や仕事に使える道具としても何も身についていない。残ったのは激しい疲労感と、「こんなに読んだのに何も変わらない自分への失望」だけです。

「努力している感」が強烈にある時ほど、人は急速に息切れします。感情の燃料が「義務感」という質の悪い重油だからです。

「すべてを平均点にする」努力は、これからの時代に真っ先に淘汰される

さらに視野を広げると、この義務感発進の努力は、残酷なほど市場価値のない結末を招きます。
「自分にはここが足りないから、人並みにできるようにならなければ」
そう思って、興味もない苦手分野を一生懸命勉強し、なんとか平均点まで引き上げようとする人がいます。しかし、これからの時代、興味のない領域を「ちょっと人よりできる」レベルに引き上げる努力は、ほぼ完全に無駄になります。

⚠️ 「平均点の人」を目指す努力の末路

「ちょっと計算が早い」「ちょっとExcelの関数が組める」「ちょっと英語の定型文が書ける」……。これらは高度な生成AIや各種ツールが一瞬で代替する時代です。苦痛に耐えながら手に入れた「平凡で無難な平均点スキル」に、市場は1円の価値も払わなくなります。

ザラにいる「平均点の人」になるために貴重な人生の時間とエネルギーをすり減らすのは、あまりにも割に合いません。苦手なこと、興味のないことにリソースを割くのは今すぐやめるべきです。

2. 平野啓一郎氏の『分人主義』に学ぶ、「本当の自分」という呪縛の解体

では、なぜ私たちはこれほどまでに「できない自分を埋め合わせよう」「人並みにならなければならない」と思い詰めてしまうのでしょうか?
その根本的な原因を鮮やかに解き明かしてくれるのが、芥川賞作家・平野啓一郎氏の著書『私とは何か――「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書)です。

「分けられない個人」から「分けられる分人」へ

近代以降、私たちは「人間にはたった一つの核となるブレない自我(=本当の自分)が存在する」という強固な思い込みを刷り込まれてきました。
英語の「個人(individual)」という単語は、「in(否定)」+「dividual(分けられる)」という語源から成り立っています。つまり、「もうこれ以上、分割することができない最小単位」という意味です。国家や社会に対して、最後に残る一個の肉体を持った存在が「個人」である、と。

しかし、平野氏は鋭く問いかけます。「私たちの人格は、本当に体と同じように分割不可能な、たった一つのものだろうか?」と。

現実に私たちの日常を振り返ってみてください。

  • 職場の上司と接しているときの自分
  • 学生時代の気心の知れた友人と飲み屋でバカ騒ぎしているときの自分
  • 実家で親や祖母と話しているときの自分
  • 一人で部屋にこもって本を読んでいるときの自分

これらは、口調も、表情も、立ち振る舞いも、湧き上がってくる感情すらも全く異なっているはずです。従来の人間観では、これを「核となる本当の自分がいて、場面に合わせて表面的な仮面(ペルソナ)やキャラを器用に使い分けているだけだ」と説明してきました。

しかし、平野氏はそのモデルを真っ向から否定します。仮面やキャラという捉え方は、「仮面の下にある素顔(=本当の自分)こそが価値ある本物で、演じている顔はウソの自分だ」という不毛な二重構造と罪悪感を生み出してしまうからです。

そこで平野氏が提唱したのが、「分人(dividual)」という概念です。
人間は、分割不可能な「1(個人)」ではなく、対人関係や環境ごとに生じる複数の「分数(分人)」のネットワークなのだと捉え直すのです。

そして、「それら複数の分人はすべて本物であり、たった一つの中心となる『本当の自分』など最初から存在しない」と断言します。その人らしさ(個性)とは、生まれつき固定された魂のようなものではなく、抱えている「分人の構成比率の総体」に過ぎないのです。

「できない自分」は固定された本質ではない

この分人の考え方を手に入れると、私たちの悩みは劇的に軽くなります。
「本が読めない自分」や「勉強が続かない自分」に直面したとき、真面目な人は「自分はなんて集中力のないダメな人間なんだ」と、自分の全人格(個人)を否定してしまいます。

しかし、分人主義の視点に立てば、それは単に「その本やその勉強法との間に、あまり心地よくない、機能不全を起こした分人が1つ立ち上がっているだけ」に過ぎません。あなたの全人格がダメなわけでもなければ、本質的に読書ができない人間なわけでもないのです。

不快で苦痛な分人が現れたなら、その分人を必死に矯正しようとする必要はありません。その分人の比率を下げ、もっとワクワクする別の分人を立ち上げて、そちらを人生の「足場」にすればいいだけの話です。

本は「教養のトロフィー」ではなく、分人を立ち上げる「道具」

平野氏は、分人は生身の人間相手だけでなく、「本や音楽、アートといった環境との間にも生じる」と述べています。
好きな作家の文章を読んでいるとき、私たちはその作品世界との相互作用によって、普段の自分とは違う、深く物事を思索する「読書用の分人」を生きています。

読書とは、自分という空っぽの容器に知識を詰め込む作業ではありません。「本という他者」と対話し、自分の中に新しい分人を立ち上げる行為です。そう考えれば、本を「最初から最後まで読破して本棚に飾るトロフィー」にする必要などまったくないことが分かります。

本を開いて、自分のアンテナに引っかかった1行を見つける。その1行をきっかけに「あ、これって自分の仕事のあの場面に使えるかも!」「この考え方、めちゃくちゃ面白いな」と自分の内面が動いた瞬間、すでに新しい分人が起動しています。その時点で、その本から得られる価値の9割は回収できているのです。

本を全知全能のありがたい教典として崇めるのをやめ、「自分の都合のいいように使える便利な道具」として雑に使い倒す。このパラダイムシフトができるかどうかが、読書を武器にできる人と、読書に殺される人の分かれ道です。

3. 実体験:現場職から未経験ITへ。「ハッタリの分人」を先に走らせた話

ここまでの話は、決して本の中の抽象的な理屈ではありません。
私自身、この「アイデンティティ(分人)を先行インストールする」というアプローチによって、サラリーマン時代にキャリアの巨大な壁を軽々と突破した強烈な成功体験を持っています。

完全アウェーの異動。「できない自分」を演じる自滅の罠

かつて私は、完全に畑違いの「現場職」から、ある日突然、人事異動によって「IT関連の専門部署」へと異動になったことがありました。
当時の私は、ITが得意でも何でもなく、専門知識もプログラミング経験もほぼゼロ。現場の泥臭い仕事しかしてこなかった人間にとって、飛び交う専門用語はまるで異国の言語でした。客観的に見れば、絶望的なアウェー環境です。

異動したばかりの頃、多くの人が無意識にやってしまうのが、「できない自分・苦手な自分」という役を律儀に演じてしまうことです。

「私はもともと現場職の人間でして、ITのことはさっぱり分かりません……」
「畑違いのところに来てしまったので、ご迷惑をおかけすると思いますが、一から勉強させていただきます……」

一見、謙虚で正直で、好感の持てる態度に見えるかもしれません。しかし、戦略的に見ればこれは最悪の初手です。
これを口にした瞬間、周囲からは「ITが苦手なのに送り込まれてきた、お荷物の可哀想な人」という痛々しいラベルを貼られます。周囲も気を遣って重要な仕事を振れなくなりますし、何より恐ろしいのは、自分自身が「できない証拠」ばかりを無意識に集め始めることです。

「ほら、やっぱり今日の会議の単語も分からなかった」
「やっぱり現場上がりの自分にはITなんて向いていないんだ」
自ら貼った「苦手な自分」というラベルを強化し、萎縮し、息苦しさの中で自滅していく。これこそが、真面目な人がアウェー環境で潰れていく典型的なパターンです。

「未来こうなったら楽しい」を語り、詳しい人として振る舞ってみた

私は早々に、「真面目に一から勉強して、実力がついてから発言する」という悠長な優等生アプローチを捨てました。そんなことをしていたら、一人前になる前に精神がすり減ってしまいます。

そこで私が使ったのが、「先になりきる」という役者アプローチです。
実力や知識が追いついているかどうかなど関係ありません。「私はITの可能性を誰よりも面白がっている人間である」「ITを使って現場を劇的に変える仕掛け人である」という配役を、先に自分自身へインストールして出社することにしたのです。

会議や同僚との雑談の中で、私は小難しいITの専門用語を使って背伸びすることはしませんでした。そんなメッキは一瞬で剥がれます。代わりに、徹底して「未来へのワクワク感(Why)」を軸に語るようにしました。

「このツールとこのシステムを組み合わせたら、今まで現場のみんなが毎日30分かけて手書きしていたあの伝票作業、ボタン一発で終わるようになりません? めちゃくちゃ面白くないですか?」

「これ、将来的にクラウドで一元管理できるようにしたら、現場から直帰できるようになりますよね。絶対そっちの方が楽しいですよ!」

システムの中身の細かいコードや仕様なんて、その時点では詳しく知らなくてもいいのです。「このテクノロジーを使えば、どんな面白い未来が作れるか」というビジョンを、あたかも全体像が見えている人間のスタンスで堂々と、楽しそうに語り続けました。

人間なんて、他人の頭の中にある知識の総量や過去の経歴を透視できるわけではありません。見ているのは「今、目の前で見せている態度、熱量、そして確信の深さ」だけです。

すると、驚くべき変化が起きました。周囲の同僚や上司が、私を「現場出身の素人」としてではなく、「現場の痛みが分かり、ITで新しい仕組みを作ってくれる頼もしい推進役」として扱い始めたのです。

「〇〇さんって、なんでそんなにITのトレンドに詳しいんですか?」
「現場出身なのに、システムの全体像がそこまで見えてるの本当にすごいですね!」
こうして周囲から言われるようになり、いつの間にか「ITが得意で頼りになる人」という強力なラベルを貼ってもらえるようになっていました。

他者からのラベルが「本物の実力」を育てる(認知科学とRASの働き)

ここから、認知科学的にも極めて合理的な「正のスパイラル」が回り始めます。
周囲から「ITが得意な人」として扱われ、頼られるようになると、今度はその配役を裏切らないように、脳の情報選別フィルターである「RAS(網様体賦活系)」が勝手に切り替わるのです。

脳は本来、世界中の膨大な情報の中から「自分にとって重要だと認識しているもの」しか視界に入れない構造を持っています。「できない自分」という配役のときは、RASは「ITの難解な数式」や「自分が理解できない専門用語の壁」ばかりを拾い上げていました。しかし、「推進役」という配役が定着した瞬間、RASは「アイデアを実現するための便利な部品や道具」だけを猛烈な勢いでスキャンし始めたのです。

「来週のミーティングであのアイデアの実現方法を聞かれたら、何て答えよう?」「みんなの期待に応えるためには、どのAPIの仕様を調べておけばいいか?」
この時の情報収集には、1ミリの義務感もありませんでした。分厚いITの専門書を1ページ目からめくって暗記するような苦痛は一切なく、「自分のワクワクするアイデアを実現するための部品(道具)を探す」という切実な好奇心でネットや本を読み漁りました。結果として、必要な知識だけが恐ろしいスピードで脳に定着していったのです。

CYCLE MODEL

分人を育てる「相互作用」の正のスパイラル

01
【配役の先行設置】
「ITに詳しい自分」「現場を変える仕掛け人」という配役(分人)を仮置きして振る舞う。
02
【他者からのラベル付与】
周囲が「詳しい人」「頼れるリーダー」としてリアクションし、新しいラベルを貼り返してくれる。
03
【RASの自動スキャン】
関係性と期待を裏切らないため、脳のRASが必要な情報(課題解決の道具)だけを急速に吸収する。
04
【本物の実力への昇華】
実践を重ねるうちに後から本物の実力が追いつき、仮置きだった分人が強固なアイデンティティとして完成する。

私は人を騙すペテン師のような嘘をついたわけではありません。「未来こうなったら楽しい」という本音の好奇心をエンジンにして、新しく立ち上げた分人を、周囲との相互作用を使って本物の実力へと急速育成したのです。

もしあの時、「自分は現場職だから」「ITは苦手だから」という過去の古いラベルにしがみついたまま、義務感で資格のテキストを丸暗記しようとしていたら、間違いなく私は挫折し、無難で使えない平凡な人材のまま終わっていたはずです。

4. 今日から使える「アイデンティティ先行インストール」実践ロードマップ

この「配役を先に変えて、実力を後から引っ張り上げる」アプローチは、読書、仕事、スキルアップ、あらゆる自己変革に応用可能です。具体的にどのように日常に取り入れればよいのか、3つのステップで解説します。

ステップ①:無意識に演じている「過去の無難なラベル」を脱ぎ捨てる

私たちは生まれてから今日に至るまで、親、学校の先生、友人、社会から無数のラベルを貼られて生きてきました。そして厄介なことに、自分自身でもそのラベルを「これこそが本当の自分だ」「これが無難なポジションだ」と思い込み、無意識にその役を演じ続けてしまっています。

・「私はコツコツ努力するのが苦手な人間だ」
・「私は理系じゃないから、ロジカルシンキングやITは無理だ」
・「私は読書が苦手で、本を1冊も読み切れない人間だ」
・「私は目立たず、波風を立てずに平均点を取っているのが無難だ」

まず、ノートを開いて、自分が自分に貼ってしまっている「言い訳のラベル」をすべて書き出してみてください。
そして、それらの紙を見つめながら、平野氏の言葉を思い出してください。そんな「本当の自分」など、どこにも存在しません。それは過去の特定の人間関係の中でたまたま作られた、古い分人のパターンの1つに過ぎないのです。役者が舞台を降りれば衣装を脱ぐように、「ああ、私はこれまでこの役を律儀に演じていただけだったんだな」と気づくだけで、その呪縛は半分以上解けます。

ステップ②:理想の配役を決め、「衣装」と「所作」を先に身につける

古い役を下ろしたら、次は新しく演じたい魅力的な配役を決めます。
ここで重要なのは、「スキルを身につけてからその役になる」のではなく、「今この瞬間から、その役として生きる」ことです。

例えば、読書にコンプレックスがあるなら、「読書ができるようになりたい人」という惨めな役を演じるのは今すぐやめましょう。「自分のビジネスの課題を一瞬でハックする、超実践的リサーチャー」という配役を設定するのです。配役が決まれば、所作(振る舞い)が自動的に変わります。

❌ 読書が苦手な人の所作

1ページ目から律儀に読み始め、頭に入らない自分を責め、途中で挫折して本を閉じる。本を神聖な「教典」として扱ってしまう。

⭕ 実践的リサーチャーの所作

全体を読む気はゼロ。目次をスキャンし、自分の課題に関係する1節だけを乱暴に開き、数行のヒントを抜き出して即閉じる。「道具」として雑に使い倒す。

「この役なら、どう振る舞うだろうか?」「この役なら、どんな言葉遣いで、どんなスピード感で本を扱うだろうか?」
形から入って構いません。衣装を着て、その所作をトレースするうちに、脳の認識(自己アイデンティティ)が後から強制的に書き換わっていきます。

ステップ③:周囲の環境とラベルを巻き込み、分人を「本物」に育てる

新しい役を立ち上げたら、それを自分一人の胸の中にしまっておいてはいけません。平野氏が言うように、分人は「他者との相互作用」の中でこそ育つからです。

SNSやブログで、「今、〇〇というテーマにめちゃくちゃ興味があって、こんな仮説を検証している」と発信してみる。
職場で、「最近〇〇のツールを触っているんですが、これを使うと私たちのチームの作業が劇的に効率化しそうなんですよね」とワクワクしながら提案してみる。

💡 ハッタリと嘘の決定的な違い:
「知ったかぶり」をする必要はありません。「自分は全部知っている」と偽るのではなく、「この道具を使えばこんな面白い未来が作れるはずだ」というビジョン(Why)の熱量だけを先行させるのです。仕様や技術(How)は後からいくらでも道具として調べれば問題ありません。

熱量を持って語っていると、周囲はあなたに対して「〇〇について詳しい人」「〇〇に熱中している人」という新しいラベルを貼り返してくれるようになります。誰かから「〇〇さんって、その分野に本当に詳しいですね!」と言われた瞬間、あなたの脳内には強烈な報酬系ホルモンが分泌されます。そして、「もっと期待に応えたい」「もっと面白い景色を見たい」という純粋な内発的動機によって、学習と実践が加速していくのです。

5. 人生を「複数の分人のポートフォリオ」として生きる

最後に、この生き方がもたらす究極のメリットについてお話しします。それは、「人生のリスクヘッジ」ができるという点です。

1つの人格に人生を賭けるな(資産運用の発想)

平野啓一郎氏は著書の中で、分人主義を「リスクヘッジの思想」としても位置づけています。
もし人間が「たった一つの分けられない個人」だとするなら、会社での仕事がうまくいかなかったり、職場でパワハラを受けたりした時、あなたの全存在(100%)が否定されたことになってしまいます。逃げ場がなくなり、うつ病を発症したり、「自分という人間そのものを消去してしまいたい」という極端な破滅願望へと追い詰められてしまうのです。

しかし、自分を「複数の分人の集合体(ポートフォリオ)」として捉えていればどうでしょうか?

📊 分人ポートフォリオの分散モデル例
会社員としての分人(40%):現在ストレス過多・不調気味 一時的な下落銘柄
家庭・パートナーとの分人(20%):穏やかで安心できる居場所 ディフェンシブ資産
知的好奇心・探求の分人(20%):本や技術をハックする自由な時間 成長グロース資産
趣味・SNSコミュニティの分人(20%):共感し合える仲間との刺激 オルタナティブ資産

たとえ会社での分人がどれほど理不尽な攻撃に晒され、不調に陥っていたとしても、それはあなたの人生の40%に過ぎません。「ああ、会社の上司との間には不幸な分人が生じてしまっているな。でも、それは自分の全人格のせいではなく、単なる相性の問題(半分は相手のせい)だ」と冷静に切り離すことができます。

資産運用において全財産をたった1つの集中銘柄に投資するのが破滅への道であるのと同じように、人生のアイデンティティをたった1つの配役に全額ベットしてはいけません。複数のエッジの効いた分人を同時進行のプロジェクトのように走らせ、ポートフォリオを組んで生きるべきなのです。

興味のない「平均点」を捨て、尖った分人を生きよう

「すべてを人並みにこなさなければならない」という思い込みは、あなたを最も退屈で、最も消耗し、最も代替可能な「平均点人間」へと閉じ込める呪いです。
苦手なこと、義務感しか湧かないことに貴重な人生のエネルギーを注ぐのは、今日限りで終わりにしましょう。そんなものは「道具」に任せるか、得意な人に頭を下げてパスすればいいのです。

あなたが情熱を注ぐべきは、「未来こうなったら楽しい!」と心からワクワクできる領域に、新しい分人を立ち上げることです。

SUMMARY
【結論】「できない自分」を脱出する5つの生存ルール
  • 義務感発進の努力をやめる(手段を目的化・形骸化させない)
  • 本や知識は「道具」として傲慢につまみ食いする(通読の呪縛を捨てる)
  • なりたい自分の配役(分人)を先にインストールする(所作から入る)
  • 周囲のリアクションを巻き込んで、後から本物の実力を追いつかせる(RASの活用)
  • 複数の心地よい分人を育てて、人生をポートフォリオで楽しむ(集中投資の回避)

人間は、いつからだって、どんな配役だって自由に選ぶことができます。
過去の誰かが勝手に貼った色褪せたラベルを剥がし、今日からあなたが本当に生きたい「最高の配役」の衣装を身にまとって、新しい舞台へ一歩を踏み出してみませんか?

💡 合わせて読みたい:読書を「最大の投資」へ昇華させる根本思想

「お金」の不安を終わらせて、自由な時間を共有する仲間へ

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
FXの大失敗という「赤字」から、戦略とマインドで45歳FIREを達成したいんべすた@です。

私がこの発信をしているのは、かつての私と同じように悩む方の力になりたいから。そして、何より「平日の昼間から、時間を気にせず遊んだり語り合える仲間」を作りたいからです。(東海エリア近郊で、美味しいお酒やご飯をご一緒できたら最高ですね!)

このブログ(戦略・ノウハウ)とは別に、「note」では日々の軽めの思考や、よりリアルな頭の中を発信しています。将来は本を出したり、より多くの方と繋がる場を作っていきたいと計画中です。焦らずのんびり、一緒に人生攻略のゲームを始めませんか?

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