いんべすた@ — 更新日:2025/12/03
一つ前の記事(https://www.investor1980.com/sp500-2/)をご覧いただいた方へ。本稿はその続編です。前回はS&P500の内部で起きている“歪み”について書きましたが、今回はその視点を踏まえ、「株がこれほど強いのに、なぜビットコインだけが沈んでいるのか」を解説します。
結論を先に言うと、BTCの弱さは構造的な崩壊ではなく一時的な“溜め”であり、状況を正しく把握すれば3年ぶりの有効な買い場に見える可能性が高いです。本稿では両者の乖離を分解して、具体的なエントリー戦略まで落とし込みます。
1. 株は最高値、BTCは逆行安。この「気持ち悪さ」の正体
8月以降、S&P500(SPX)は+10%超の上昇を見せており、表面上は非常に強い相場に見えます。しかし同じ期間、ビットコインは-20%超の下落を記録しました。通常ならリスク資産同士である程度の連動が期待されますが、ここまで乖離が開くと市場参加者の違和感が増し、BTCへの資金流入が止まる要因になっています。
2. 「ビットコイン・コンディション・ピラミッド」による分解
現在のBTCの弱さは三層構造で理解すると分かりやすいです。
- 上層(需給):機関投資家の買いが継続しており、ETFなどを通じた取得は依然として注目に値します。需給面はむしろ強さを示しています。
- 中層(市場心理):ここが現在詰まっています。投資家は株を買うが、もっとボラティリティの高いBTCまでは手を出し切れない。リスク回避的な心理が資金を抑えています。
- 下層(マクロ):FRBのQT終了や利下げ期待など、マクロ環境はリスク資産に追い風となる局面です。
要点:上層と下層は追い風だが、中層(心理)が詰まっている。上と下が強いのに“真ん中”だけ弱い――この“挟まれた”状態が短期的なBTCの弱含みを生んでいます。
3. 前回のS&P500分析から見えるBTC下落の要因
なぜ中層(市場心理)が冷えているのか。それは前回指摘したS&P500の中身の歪み(マーケット・ブレス)と密接に関係しています。具体的には:
- 資金の偏り(マーケット・ブレスの悪化):SPXの上昇は実はごく一部の大型株によるもので、上昇トレンドにある銘柄は市場全体の4割に満たない状況です。資金は確実性の高い銘柄へ集中しており、全体のリスク許容度はまだ低い。
- 守りの姿勢:投資家は“株は買うがBTCまでは買わない”という半信半疑の状態。これがBTCへの資金流入を堰き止めています。
ただしマクロ環境(下層)を見れば、QTの終了と利下げ期待があり、これはマネーが溢れる方向です。需給(上層)でもETF経由の需要は根強く、短期的に心理(中層)が溶ければ一気に動きやすい下地があります。
4. 戦略:S&P500を「先行指標」として使う
ここから具体的な戦略。重要なのはBTC単体の価格だけを見るのではなく、SPXの挙動を先行指標として使うことです。僕が推奨するのは以下の3ステップ。
- SPXの構造的な強さを監視する
SPXが主要サポート(例:50日線や200日線)で反発し、かつ市場の裾野(上昇銘柄の割合)が広がりを見せたら、それは「投資家の守りが解けた」合図です。 - マクロノイズを無視する
短期の経済指標やニュースでBTCが乱高下しても、SPXが示す“リスクオンの波”が本格化するまでは動かない方が賢明です。 - 乖離が埋まる瞬間を段階的に狙う
株高に対してBTCが遅れている今は、バネが縮まっている状態です。SPXの健全性が確認された瞬間に、BTCは遅れて強烈なリバウンドを始める可能性が高い。そこで段階的に買いを入れていくのが合理的です。
5. 実践のための注意点(リスク管理)
- ポジションサイズ:総資産の一部(例:2〜5%)から入り、SPXのシグナルが明確なら段階的に増やす。
- ストップ:エントリー根拠が崩れたら即撤退(例:SPXが50日線を明確に割る、またはBTCが重要サポートを割る等)。
- 時間軸:想定レンジは中期(数週間〜数カ月)。短期のノイズに振り回されない。
6. 総括 — 今は買い場か?
数字(ファクト)を直視すると、現状は「押し目の準備が整いつつある局面」と見えます。需給とマクロはすでに追い風で、残るは市場心理の解凍です。SPXの短期サポート(特に50日線)付近で底堅さが示される瞬間は、段階的にBTCを拾う好機となるでしょう。
執筆:いんべすた@
注意:本稿は情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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