【書評】山口周『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』を読んで

【書評】山口周『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』を読んで

こんにちは、いんべすた@です。本記事では、山口周氏の著書 人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20 を読み、その核心を抽出し、私自身のFIRE経験も踏まえて実践的に解説します。人生を「経営」する――この考えを具体的に行動に落とし込むためのガイドとしてお役立てください。

目次

序章:なぜ人生を「経営」するのか

私たちは学校で数学や歴史を学びますが、「人生をどう生きるか」を教わることは稀です。山口氏は、人生を一つの会社のように捉え、時間や身体という有限の資本をどのように配分し、増やしていくかを考える重要性を説きます。これは単なる比喩ではなく、意思決定の軸を持つための具体的なフレームワークです。

パート1:勝利条件を定義する(ウェルビーイング)

本書が提示する「勝利条件」は、古代ギリシャのアリストテレスに立ち返るような中庸の幸福、すなわち持続的なウェルビーイングです。山口氏は、マキャベリ的な成功至上主義と、理想的な自分らしさ至上主義の二極化を批判し、両方を統合する「成功と幸せのバランス」を推奨します。

ウェルビーイングを成り立たせるために必要な三つの要素は次の通りです:自己効力感・社会的つながり・経済的安定性これらは互いに補完し合い、欠けると持続的な幸福は成り立ちません。

パート2:時間資本と三つの資本(人的/社会/金融)

私たちの最初の資本は「時間」です。この時間を如何に人的資本(スキル・知識)、社会資本(信用・評判)、金融資本(貯蓄・投資)へ変換していくかが人生の本質的なゲームです。山口氏は、この資本配分の順序を重視します。時間→人的→社会→金融という黄金ルートを守ることで長期的な利回りが高まると説明しています。

パート3:オプションバリュー(選択肢の価値)

本書『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』で繰り返し強調されるのが、オプションバリュー=選択肢の価値です。変化の激しい時代においては、正解を一つに絞るよりも、選択肢を多く持つこと自体がリスク耐性を高めます。投資における「分散」と同じ発想です。

実は私自身、2〜3年前からFIREできる環境にありました。しかしすぐに辞めなかったのは、配属先が変わり、今まで経験したことのない業務ができ、とても楽しかったからです。「このまま働き続けてもいいな」と思えるほど充実していました。ところが年度が変わるタイミングで、自分の望まない業務に任命されました。その瞬間、私は「選択肢を行使しよう」と決断し、FIREに踏み切りました。

FIREして強く感じたのは、一つの場所に定住すること自体がリスクだということです。FIREによって「働く/働かない」「どこで暮らすか」「どの程度リスクを取るか」といった選択肢が増えました。しかし選択肢が増えたからといって、自動的に幸福が保証されるわけではありません。むしろ、選択肢を持つことで、自分の価値観や目標を改めて定義し直す責任が生まれます。

だからこそ、本書の示す「オプションバリュー」の考え方は、FIREを志す人にも、会社員としてキャリアを模索する人にも、大きな示唆を与えてくれるのです。

パート4:ポジショニングの重要性

山口氏が強調するもう一つの重要テーマは、どこで戦うか(ポジショニング)の問題です。個人の成果は、能力の有無だけで決まるわけではありません。同じ能力でも、居場所(業界・職場・地域)によって大きく差が出ます。

ポジショニングの判断には、競合の強さ、代替品の脅威、需要の見通しなどを考慮する必要があります。さらにAIや技術革新が進む中で、正解のある仕事を避け、問題発見や感情的知性(EQ)などAIに代替されにくい領域に位置付ける戦略が有効です。

パート5:「強みは何か」は危険な問い

自己啓発でよく聞く「強みを伸ばせ」というアドバイスですが、山口氏はこれを鵜呑みにすると危険だと警告します。強みを一つに固定すると、変化に弱くなり、オプションを失う可能性があるからです。むしろ複数のスキルを組み合わせること、環境依存しない学び方、そして好奇心を持ち続けることが長期的に価値を生みます。

パート6:実践—打席を増やす・楽しめる仕事を選ぶ・人生の四季

実践的には、打席(挑戦)の数を増やすことが重要です。量をこなすことで成功の確率は上がります。加えて、長期的に続けられ、楽しめることを基準に仕事や活動を選ぶべきです。興味が持てない仕事に時間を投じても人的資本は育ちません

山口氏は人生を四季に例え、春(試す)→夏(集中)→秋(広げる)→冬(与える)というサイクルを提示します。若い時期に人的資本を積み、働き盛りで社会資本を築き、成熟期に金融資本と経験を活かして広がりをつくる。最後に知恵を次世代に渡す、という流れです。

なぜこの本をおすすめするのか?(私の推薦理由)

ここまで本書の主要点を紹介しました。では、なぜ私がこの本を読者に強くおすすめするか――答えは明快です。

  1. 実践に直結するフレームワーク:抽象論に留まらず、時間資本の配分やポジショニング、オプションバリューなどを具体的に示しており、明日から使える視点が多い点。
  2. 不確実性への備え:時代の変化が速い現代において、選択肢を残すこと、柔軟にポジショニングを変えることの重要性を説いており、実用的なリスク管理書としても機能します。
  3. 読者の立場を問わない普遍性:学生、会社員、起業家、FIREを目指す人、既にFIREした人――どの立場でも学びが得られる点。

私自身はFIRE後にこの本を読んで、自由をどう設計するかという新たな問いを得ました。単に「働かないためのFIRE」ではなく、選択肢を増やし、ウェルビーイングをデザインするための道具として本書を位置づけています。

具体的なアクションリスト(本書を読んだ後にやること)

  • 1. 自分の時間配分を見える化する(何にどれだけ時間を使っているかを書き出す)。
  • 2. 人的資本の「種」を3つ書き出し、次の1年で育てるための具体行動を決める。
  • 3. 社会資本を増やすための「小さな投資」(良質な人との接点を月1回作る)を計画する。
  • 4. 金融資本の目安(生活費の何年分)を決め、逆算して人的・社会投資の余地を判断する。
  • 5. 自分のポジショニングを言語化し、代替リスク(AI等)に備える学びを1つ取り入れる。

結論:人生を経営する覚悟を持とう(ウェルビーイングとポジショニング)

山口周氏の『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』は、単なる自己啓発書ではありません。それは現代を生き抜くための実用的な設計図です。ウェルビーイング(持続的な幸福)を勝利条件に据え、時間を資本として人的・社会・金融資本を戦略的に配分する。加えて、自らがどこで戦うかを定めるポジショニングを持つことは、結果を大きく変えます。

私はFIREを通じて自由を手に入れましたが、自由を有効に使うためには戦略が不可欠です。選択肢を増やし、自分の価値観で生きるための判断軸を持つこと——これが本書が教えてくれる最大の恩恵です。読了後は、ぜひ自分の時間割を見直し、今日から一つだけでも選択肢を増やす行動を始めてください。

参考書:山口周『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』

執筆:いんべすた@(FIRE達成)

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